New Paper Is Out (2021/11/19)

Nov 19, 2021

8 mins read

論文紹介

論文が出ました!

一文要約

自由研究で集めていたアブラゼミの日毎の羽化数データに対してEDMを適用することで、アブラゼミの日毎の羽化に対して影響を持つ要因を探りました。

概要

小学生 (2003年)から高校生の時 (2012年)に夏休みの自由研究として集めていたアブラゼミの抜け殻の数 (=羽化数)を用いて、Empirical Dynamic Modeling (EDM)を行い、羽化に対して因果を持つ要因を探りました。 その結果、他の昆虫と同じように気温や日照時間が影響するとともに、他の昆虫ではあまり知られていなかった降水量や湿度が羽化イベントに影響することがわかりました。 さらに、季節性を排除したEDMの結果からメスの羽化イベントがオスの日毎の羽化数に正の因果効果があり、反対にオスの羽化イベントがメスの羽化数に負の因果効果があることがわかりました。 これらの結果はセミの幼虫期のみを地下で過ごすという特異な生態や、雄性先熟という昆虫における一般的な現象 (オスがメスよりも先に出現する現象)の理論的予測と一致しています。 小学生から高校生の間の夏休みに自由研究を行う (行わせる?)という日本の文化は研究の面白さを広く伝えるために重要でありますが、そのデータはその当時に発表されたまま眠ってしまうことが多いです。 これらのデータを掘り起こし適切な解析を行うことは市民科学を発展させる一つの手段なのではないかと期待しています。

裏話

セミの抜け殻集めは小学生の夏休みの自由研究として人気なテーマの一つです (筆者の体験談; これまで5人に会ったことがあります)。筆者自身もセミの羽化数の日毎のデータを集めて自由研究を行っていました。1年やると次年度の結果にも興味が湧くため、結局高校生の時までの10年の間抜け殻を収集していました。

中学生の時にこれらのデータに目をつけてくださった当時の先生のおかげで、共著者兼指導教員である徳永さんの元でこれらの解析するプログラムに参加することになりました。当時はExcelすらあまりわからない状態でしたが、「ExcelではなくこれからはRの時代です。」と言われ、初めてRをインストールしたことを覚えています。また、そのプログラムの一環で筑波大学の良さ (具体的には菅平と下田の良さ)を目にし、筑波大学への進学を決めたりしました。

しかし結局大学院に進学するまでこのデータをどうすれば良いかよくわからないまま過ごしていました。そんな折、とある個体群生態学会で川津さんのEDMの講演を聞き、飲み会の際に相談したのがこのデータが世に出る最大のきっかけだったかなと思います。そこからEDMの勉強を教えてもらいに川津さんのもとで短期修行(?)をし、実際の解析を行いました。

論文自体は最初の投稿から1年くらいはかかり長いなと思いましたが、筆者の人生の半分くらいをかけたデータと解析結果を世に出すことができたことは非常に嬉しく思っています。

DRYADにデータと解析のスクリプトをアップロードしているので興味がある方はそちらもご覧ください。 URL: https://datadryad.org/stash/dataset/doi:10.5061/dryad.6wwpzgmxf EDMは結構計算に時間を食いますし、メモリも食います。なのでAmazon EC2上でEDMを動かすため準備のメモを参考にしていただいても良いかもしれません。 EC2はある程度のスペック以上になると有料なのでそこは気をつけてください。

Sharing is caring!